029『いつかパラソルの下で』

いつかパラソルの下で

いつかパラソルの下で

直木賞がとれず残念。それでも候補にあがっただけあって面白かった。
しかし、冒頭からちょっと驚かされた。そんな生々しいところから始まるのか・・・と。今まで『DIVE!』とか『カラフル』を読んでいた読者には結構衝撃的な始まりだな〜
厳格だった父から逃げるように家を出て、仕事も男も転々として生きてきた主人公。父が死んでもうすぐ1年という時期に、父親の不倫相手が出てきて、今まで知らなかった父の姿を知るために父の故郷を訪れるお話。父親の残した「暗い血」の正体を求めて佐渡に行くまでは面白かった。祖父の伝説とかね。後半ちょっとダラダラしてきて読むのが遅くなったけど。ここまでひっぱって何もないのかと。兄妹3人と同じような心境になった。
しかし、ラストはやはり森絵都らしい爽やかさが漂う。「生きている人」達の話のほうがやっぱり心も軽くなって嬉しいっていうのがすごい伝わってくるな〜
ただ『ダ・ヴィンチ』のインタビューでも「何を書いてもハートウォーミングな話に着地してしまうのは作家としてどうなんだろう」と本人も思っているらしい。いつかドロドロした話も読ませてください。どんなものになるのか気になる。