061『沼地のある森を抜けて』

沼地のある森を抜けて

沼地のある森を抜けて

叔母が死んで、そのマンションと一緒に先祖代々伝わるぬか床も貰い受けた久美。そして、そのぬか床から出現した卵から生まれてきたのは小学校の時の同級生だった。という不思議な事件から始まるのですが、ぬか床から生まれたもう1つ(一人?)の存在カッサンドラに悩まされ、そのぬか床をシマに返そうとする物語の合間に「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」というエピソードが入って「何だこれ?」と、更に不思議な話となってます。
久美とぬか床の話も次第に壮大なエピソードへと進化していき、読み終わった後はなんというか疲れた。最後の方にある

世界は最初、たった一つの細胞から始まった。この細胞は夢を見ている。ずっと未来永劫、自分が「在り続ける」夢だ。

が印象的。それを受けて久美と共にシマに来た風野が、いう一言。

全宇宙にたった一つの存在。そのすさまじい孤独が、遺伝子に取り込まれて延々伝わってきたのかな、って思って・・・

だから生命は増殖するっていう話に繫がって、どうも悲しい印象を残してしまったわけですが。
そして、久美とぬか床の話、「かつて〜」で展開される「僕」の話どちらにも出てくる『ウォール』と言う単語。細胞膜ができた時点で一つのものが二つになる。でも、孤独から抜け出すために増殖しても、その壁が自分ともうひとつが別固体だということを証明していて、それもまた違う孤独なんじゃないかな〜と思ってしまいました。