『78(ナナハチ)』

78(ナナハチ)

78(ナナハチ)

クラフト・エヴィング商會の一人、吉田篤弘さんの小説。
78回転でまわるSPレコード。各短編ごとに、最初のページにあるレコードにまつわる物語が13篇。繫がっているようで、まるで違う世界もあれば、あれ?これってあの話と関連するの?と一つの物語のような。最初の短編はちょっと青春モノのような話でしたが、次第にクラフト・エヴィング商會の作品にも出てきそうな「いまはもうないもの」のような欠片が見られて、クラフト・エヴィング商會好きには心地よい世界になっていきました。<夜の塔>はかなり惹かれるモチーフ。これだけでも小説が何本も書けるような。7階分の搭にはそれぞれ上から順に7人の姉妹が住んでいて、それぞれ物語・歴史・音楽・代筆・研究結果・日常・絵と何かを書いて(描いて)いる。各階ごとにそれぞれ物語がありそうな素敵な場所です。
日常の描写でも、同じような境遇の三角?四角?関係の恋愛模様が、他の話とあいまって面白い話になってます。ふられた男達は可哀想だけど、この話の流れが妙に幸せな気分にもさせてくれているな〜