『後巷説百物語』京極夏彦 角川書店

後巷説百物語 (Kwai books)

後巷説百物語 (Kwai books)

一番印象に残ったのは『赤えいの魚』自分の足元をぐらつかせる話です。確かに今この時代が何十年か先も同じなんてことはありえない。より暮らしやすく、より豊かに、より楽しくといった社会を目指し続けている訳ですし。
私たちは今乗っている赤えいが沈んだとき、また別の赤えいの背中に「此処こそ本当の大地だ」と信じて乗ってしまうんだろうなぁ。
全体を通して、京極さんが別のシリーズでも京極堂に言わせていること『世の中に不思議なことなど一つもないのですよ』なことを押し出してますよね。ただ、『巷説百物語』『続巷説百物語』『後巷説百物語』では、妖怪という形を肯定することで幸せになれる。今現在でも、妖怪という形を取ることは少なくなったけど、他の形で夢をみてますよね。それが存在してなくても幸せならそれでイイって。江戸・明治の時代でも今も同じ。何度別の赤えいの背中に乗ったとしても、乗っている人間は変わらないようです。