『博士の愛した数式』小川洋子 新潮社

博士の愛した数式

博士の愛した数式

 記憶が80分しか持てない元大学教授のもとに家政婦として働くことになった主人公。80分しか憶えてないので、行く度に博士にとって主人公は初対面の人物。けれど、その二人の間に主人公の息子(頭が平らなのでルート(√)と博士に命名された)が入ったことで、奇妙だけど幸せな日常が始まるわけです。
 これほど、数字を美しく、そして、愛しく思える小説は無いだろうな。マイナス1の平方根はとても遠慮深く、24は潔い、220はチャーミングで、220と284は神の計らいを受けた絆で結ばれあった数字。などなど数字に対する印象が心に残ります。
 博士の服に張ってあるメモによってかろうじて繫がっている3人の友情がいいです。すぐ壊れてしまうものだけれど、そのギリギリで保たれている関係がはかない。おすすめの小説です。