『アベラシオン』篠田真由美 講談社

アベラシオン

アベラシオン

篠田真由美といえば建築探偵ですが、『未明の家』と『原罪の庭』しか読んでません。メガネの下は美青年な桜井京介と、美少年な蒼という、キャラ萌え的な読みが多い自分にとってかなりツボ的な作品なはずなのに!
こちらの『アベラシオン』は建築探偵とは関係なく(あるキャラが出てるらしいですが分かりません。)篠田真由美が10年も温めてた作品ということで読んでみました。
主人公・藍川芹がある事件に偶然居合わせたことで、アンジェローニ・デッラ・トッレ家のパラッツォに招待されることになる。そして、その家に残された『神秘の薔薇』を巡る争いと、殺人事件に巻き込まれる。
出てくる人物すべてが怪しく思えてくる。実際最後までいろんな真相を残しつつ8章の後半あたりから真相を次々に明かされてクラクラしました。舞台がイタリアで、ヨーロッパの芸術と歴史を中心に書かれてる中、時々出てくる芹の日本での生活の回想シーンを読むと夢から覚めるような不思議な感じ。

P649
そして自分がどれほど汚れた人間でも、私は人間であることから降りたいとは思いません。神を目指すことはできなくとも、悪魔になりたいとも思わない。歯を食いしばっても、人であることにしがみついて生きていきます。