『語り女たち』北村薫 新潮社

語り女たち

語り女たち

空想好きな男が、本を読むにも目が疲れてくる年齢になったので、千夜一夜のように女たちに物語を語ってもらう話。
女性たちが語る話は様々で、日常のちょっとした出来事を語る人もいれば、現実では起こらないような不思議な体験を語る人もいる。もしかしたら、その人の作り話だったり、空想話だったり、勘違いだったりするのかもしれないけれど、海沿いの一室で男と女だけがいる空間の中、その話を共有する瞬間だけはその物語の中に身をおいていたいと思えるんだろうな。
一番好きな話は『笑顔』。会社の先輩が贈ってくれるプレゼントは、「朝飯前」「今更」「海鳴り」「笑顔」・・・と「あ」から始まる言葉のもの。「笑顔」は駅のホームに書いたスマイルマーク。現実にそんなことされたらひくだろうな・・・と思ってしまいますが、実際に、本当にそんなことやられたらコロッとおちてしまうかも。