『夜のピクニック』

夜のピクニック

夜のピクニック

恩田陸の作品は不思議なくらい勢いよく読めます。
朝8時から翌朝8時まで一日かけて、前半はクラスごと、後半は自由行動で80キロを歩く高校の行事「歩行祭」。聞いただけで疲れる行事だけれども、物語の中では3年にもなると途中で棄権してバスに乗ることが悪夢であるかのように書かれてます。「そんな大げさな」とも思ったけれど、読み進めていくうちに、大勢の生徒がそれぞれいろんな思いを持ちながら同じ道を歩き続ける不思議な感覚とか、いつもは寝ているような時間深夜2時ごろまで、親友と話しながら、痛む体で歩き続ける非日常な時。修学旅行の代わりで、一日歩き通し、睡眠時間は2時間しかない。過酷な行事なのに、読んでいると参加したいと思ってしまう。3年生がリタイアしたくない気持ちも分かるようになってきます。
同じクラスながら、あまり話すことのない西脇融と甲田貴子。それでもどこか似ていて、通じ合っているように見える二人の話をメインにした青春小説。その中にも、隣の女子高の女生徒を妊娠させた犯人探し、アメリカにいる友人からの謎めいた手紙、その友人の弟の「歩行祭」の参加など、恩田陸らしいブキミさ、怖さがあって更に面白い。(ここら辺の謎はそれほどストーリーには関わってはこないけれど)
ストーリーの面白さと同時に、自分の高校生活も思い出してしまう小説。同じじゃないけれど、どこか「こんなこともあったなぁ」と何故か共感してしまう。
『図書館の海』に、設定はちょっと違うけれど「歩行祭」を書いた話「ピクニックの準備」があるらしいので、それも是非読んでみようと思ってます。