『名探偵木更津悠也』

名探偵 木更津悠也 (カッパ・ノベルス)

麻耶雄嵩の2大探偵、メルカトル鮎と木更津悠也。今回は木更津が白幽霊に導かれるかのように出遭った4つの事件。
どれも、「どう殺したのか？」というトリックを推理するものではなく、事実と可能性から「誰が犯人になりうるか？」を推理してる話なので、地味な感じがします。
でも、この本の一番面白いところは、名探偵である木更津悠也とワトソン役である香月実朝の関係でしょうね。語り手である香月が事件の内容を語る合間に述べている名探偵の条件、そしてその条件にピタリと当てはまる木更津をべた褒めする記述。一見すると香月が木更津を尊敬しているようにも見えるけれど、それぞれの事件が香月のヒントで解決していく様を見ると(「禁区」はヒントと言えないかな？)木更津が名探偵であるように仕向け楽しんでるようにしか見えません。絶対、探偵より先に真実に気づいてる筈。そう考えるとカバー折り返しの作品紹介が作家ではなく香月の名前になっているのも素敵な演出。
『翼ある闇』も香月の裏の性格が際立ってたので、読み返したいんですけど、妹の友人に貸したまま帰ってきてないのよね。手元にないと余計に読みたくなってきました。