『西日の町』

西日の町

西日の町

『夏の庭』『ポプラの秋』は文庫になっていて有名だったので読んではいたのですが、この本は知りませんでした。なので、図書館で見つけたときは「おぉこんな本も出していたのか」と驚き、そのまま借りてきました。
母と二人で暮らしていた主人公のもとに、ある日突然あわられた祖父「てこじい」。部屋の片隅で一日中じっとしているようなてこじいとの奇妙な3人暮らしの様子を描いた作品。
なんとなく、主人公の立場で読むと母とてこじいの不思議な繋がりに一人だけ仲間はずれにされている感じがします。母の少し年の離れた弟とてこじいにはない二人の特別なつながりというものが。なので、最初に出てくる、てこじいのそばで夜更けに爪を切る母の姿に、最初は怖さを感じたものの、次第にそれが母とてこじいの二人だけの秘密の儀式のような感じがしてくるから不思議です。
主人公が母と二人でてこじいの最後を看取ったときは、てこじいが死んだからという訳ではなく、特別な時を二人で共有したことで母との絆(母とてこじいに会ったような絆)が生まれたような気がしました。
『春のオルガン』という本も読んでみたいなー