『山伏地蔵坊の放浪』

山伏地蔵坊の放浪 (創元推理文庫)

山伏地蔵坊の放浪 (創元推理文庫)

土曜の夜にバー『えいぷりる』にひらかれる、山伏「地蔵坊」氏の遭遇した難事件の数々を酒のつまみとして楽しむ恒例行事。バーの名前とかけているのかその山伏が語る体験談は必ずしも実体験と言うわけではないようですが、彼のしゃべりやその話の面白さから聞いているメンバーも彼の酒代をおごるくらい熱心に聞いているわけです。
相手の作り話なのでその真相をどうしようと語り手である山伏の思いのまま。最後の話でもメンバーがふと口にするように、それはまるで推理小説家のようでもあるわけで。メンバーの一人である青木が真相に辿りつきそうになると、「そろそろ帰る時間なので・・・」と解決話をいきなり話し始めるあたりは、これまで自信満々にというか真剣に考えているメンバーを余裕な雰囲気で見ていた山伏のあわてた姿が見れて面白かった。
それぞれの話の真相も「なるほど」と山伏の話を聞いているメンバーの一人になったかのようにうなづいてしまいます。この小説は山伏の話をメンバーの一人として聞いてるかのように楽しむのが一番いい読み方かもしれないです。
これで有栖川作品はエッセイとかアンソロジー収録作を除くと『幽霊刑事』『モロッコ水晶の謎』の2冊となりました。『幽霊刑事』は古本屋で見つけてくるとして、国名シリーズは文庫で集めているので購入するのはためらいます。はやく図書館に入らないかと悶々としている日々。