026『サマータイム』
- 作者: 佐藤多佳子,毬月絵美
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1993/05
- メディア: 単行本
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進が主人公の『サマータイム』では、夏の最後の日、佳奈が作った塩辛い海色のゼリーを無心に食べて、夏にさよならする儀式のような一コマがすごい好き。
ひと口めは、南の海の波、きらきらしたブルー。ふた口めは、海草の色、謎めいたグリーン。み口めは、深い冷たい水底の色、青緑。
主人公である進が片腕でピアノをひく広一に心惹かれているのと同時に、姉と広一も進とは違う意味で交流が深まっていくわけですが、それを主人公である進の視点で見るのは結構切ない。自分とは違う関係を築いているのが悔しいというか寂しいというか。でも、この年頃の男の子だから素直にそれを言えないのが可愛いところ。
もう一方の『五月の道しるべ』は姉が主人公。こちらは広一で出会う前の話。つつじ風呂のエピソードは確かに美しくもあり、怖さも感じる。色とりどりのつつじの美しさを感じると同時に、佳奈が綺麗だろうと思って摘んだつつじが、結局は「死んだ花」なのだと知る瞬間は、佳奈と一緒に恐怖を感じた気がした。